-
日本酒の原料はお米ですが、普段食べている“うるち米”ではなく“酒米”が使われます。米どころ北海道で作られる酒米の評価は年々高くなっており、北海道の地酒はもちろん、近年は、全国各地の酒蔵でも使われているのです。
今回は、そんな北海道産の酒米について、ホクレン原材料課の水上よりご説明いたします。
ホクレン農業協同組合連合会
米穀部 原材料課
水上 椋太
「うるち米」と「酒米」の大きな違い
-
酒米と食用米の大きな違いは、お米の中心部にある白く不透明な部分「心白(しんぱく)」があることです。でんぷんに隙間ができたもので、光が屈折するので白く濁って見えます。心白のあるお米だと麹を造る際に、この隙間に麹菌の菌糸が入り込み、米の内側で繁殖してでんぷんの分解を進めます。また、心白のある米で仕込むと吸水性がよいため、もろみが溶けやすくなります。実は食用米には、心白がほとんど無いのです。
-
他にも、タンパク質や脂質が少ないこと、粒が大きく砕けにくいことも大きな違いです。日本酒造りでは精米作業で米の表面を多く削りますが、タンパク質が多いと雑味の原因になり、脂質が多いと日本酒らしい香気成分の生成を邪魔するため、米の外側に多く分布するタンパク質や脂質を削っているのです。一般的に食用米の精米歩合はおよそ90%ほどですが、酒米は通常で70%前後と高く、吟醸酒などは60%以下まで削ります。お米の大部分を削るため、大粒で砕けにくいことが求められるのです。
旨さ極める北海道の酒米への想い
日本酒造りに適したお米のことを「酒造好適米」と呼びます。北海道で作付されている酒造好適米は3品種あり、それぞれの特徴をご紹介します。
〇北海道の酒造好適米の種類
-
吟風(ぎんぷう)
2000年に誕生した北海道産酒造好適米の代表格。生産量が3品種の中で最も多く、全国各地で使用されています。
心白が大きくはっきりした品種で、芳醇な香りの日本酒が期待できます。
-
彗星(すいせい)
2006年に誕生した北海道産酒造好適米の期待の星。大粒で収量が高いうえ、耐冷性にも優れ、安定した生産が可能です。
雑味の原因となるタンパク質含有量の低さが特徴の品種で、淡麗な味わいの日本酒が期待できます。
-
きたしずく
2014年に誕生した北海道産酒造好適米の新鋭。「吟風」のように心白が大きく、「彗星」のように収量が良いのが特徴です。
雑味が少なく、やわらかですっきりとした酒質になることが期待できます。
-
-
北海道での酒米栽培は他府県と比べると歴史が浅く、試行錯誤を繰り返しながら、より高品質な酒造好適米の生産に励んできました。
日本酒づくりに携わる生産者・JA、酒蔵、農業試験場などの想いを動画でご紹介していますので、ぜひご覧ください。
JAピンネ酒米生産組合 阪口徳幸さん(左)、JAあさひかわ酒米部会 今野雅義さん(右)
北海道の酒蔵
-
-
現在北海道には14の酒蔵があります。(製造所は16か所)北は増毛町から南は函館市まで、その土地の食材に合ったお酒が醸されています。一見たくさんの酒蔵があるように思えますが、食用米の生産量が全国一の新潟県は80蔵以上あるため、全国2位の北海道はかなり少ないと言えます。(※)
一方で近年、北海道の清涼な気候、清冽(せいれつ=水などが清らかに澄んで冷たいこと)な水を求めて道外から移転してくる酒蔵もあり、蔵数は増加傾向にあります。蔵の数が増えればそれだけたくさんの日本酒が楽しめるので良いですよね!
※農林水産省「作物統計調査」(令和4年2月28日)
おすすめの日本酒の楽しみ方
日本酒はアルコール度数が高く、飲みづらいものだと感じている方にぜひお試しいただきたいのが「日本酒カクテル」です。その名の通り、ベースに日本酒を使ったカクテルのことで、おしゃれな日本酒の飲み方として人気が高まってきています。もちろん、日本酒好きの方にもおすすめです。新しい日本酒の味わい方を、気軽にお試しください!